かくしつつあかしくらすほどに、つれづれもなぐさむやとて、和賀江のつき島、三浦のみさきなどいふ浦々を、行きて見れば、海上の眺望あはれを催して、こしかたに名高く面白き所々にもおとらずおぼゆ。
さびしさは 過ぎこしかたの 浦々も ひとつながめの 沖のつり舟
玉よする 三浦がさきの 波間より 出でたる月の 影のさやけさ
こうして明かし暮らす程に、寂しさを紛らわせようと、和賀江の築島(和賀江島:相模湾東部に位置する人工島)、三浦の岬(現神奈川県三浦市)など浦々を、訪ね、海上を遥かに見渡せば眺めは素晴らしく、道中の名高く趣きある所々にも劣らぬように思われた。
寂しさを紛らわせるために道中でいくつもの浦々を眺めてきたが、どの浦も同じく釣り舟が浮かんでおるなあ。
玉寄する([打ち寄せる])三浦崎の波間から、出る月影のなんと清く澄んでいることよ。
(続く)