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無事是貴人



「太平記」後醍醐天皇御治世の事付武家繁昌の事(その1)

ここに本朝人皇にんわうの始め、神武じんむ天皇てんわうより九十五代の帝、後醍醐の天皇の御宇ぎように当たつて、武臣ぶしん相摸のかみたひら高時たかときと言ふ者あり。この時かみ君の徳に背き、しも臣の礼を失ふ。これより四海おほきに乱れて、一日もいまだ安からず。狼煙らうえん天を隠し、鯢波げいは地を動かすこと、今に至るまで四十余年。一人いちにんとして春秋に富めることを得ず。万民手足を置くに所なし。


ここに本朝人皇の始まり、神武天皇(初代天皇)より九十五代の帝、後醍醐天皇(第九十六代天皇)の御宇に当たり、武臣相摸守平高時(北条高時)という者がいました。当時上は君の徳に背き、下は臣の礼を欠きました。そのため四海([国内])はたいそう乱れて、一日も安まることはありませんでした。狼煙([のろし])は天を焦がし、鯢波([閧の声])は地を轟かせました、今にいたるまで四十年余り。一人として春秋([年月])を安らかに送る者はなく、万民は手足を休める場所もありませんでした。

続く


by balatnas | 2018-11-16 11:37 | 太平記 | Trackback | Comments(0)
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